研究

私たちの研究室は実行制御・意思決定・学習と記憶といった高次の心理機能を実装している脳の大域的な機構に興味を持っています(各内容については出版物をご覧ください).これらの心理機能は進化の過程でヒトで最も発達してきたと考えられています.一方でヒトの脳機能を調べるためには,特殊な状況を除いて
非侵襲的な(外科的介入等がない)生体計測手法を用いる必要があります.

私たちの研究では非侵襲脳機能計測法として主に機能的MRI(functional MRI: fMRI)を用いています.機能的MRIは比較的高い空間解像度(約2mm)を持ち,脳の深部や解剖学的構造が比較的小さい領域も含めて,神経活動に関連した信号(blood oxygen level dependent: BOLD)を脳全体から一貫して取得することが可能です.この特徴から,ヒト脳の大域的な機構を調べるには機能的MRIは依然として強力な手法の一つであると考えています.

しかしBOLD信号は時定数が数秒以上と大きく,時間解像度は神経細胞の活動電位の伝達速度からくらべるとはるかに低いという問題があります.これはBOLD信号は発火した神経細胞周辺の毛細血管の血液動態に依存しているためです.この生理的な限界は,複雑な心理・認知プロセスが
短時間で作用するような行動を調べるときには決定的な問題となり得ます.とりわけ,脳機能の動的な側面や領域間の相互作用の機構を機能的MRIで調べるのは大きな挑戦となります.

私たちの過去の研究では,実行制御課題や選択行動課題遂行中のヒトの脳活動の時間的動特性を機能的MRIを用いて調べました(Jimura & Braver 2010; Jimura et al. 2010; Jimura et al. 2013).これらの研究においてMRI信号の動特性と心理機能の関係を調べることができたのは,解析対象の信号の時定数が数十秒以上だったためです.私たちは現在,MRI信号で解析できる時定数の最小値をさらに小さくできるような解析手法と実験をデザインし,精緻な心理機能を実装する脳の大域回路の機構を調べるきっかけにしたいと思っています.

現在は下記のようなプロジェクトをすすめています:
認知の実行制御機構
価値に基づいた選択行動の機構
実行制御と意思決定の関係

機能的MRIの時間領域での解析